ミズタマリスクは、タップした地点(または現在地)が大雨のときに周囲より水が集まりやすい地形かどうかを、2段階のロジックで判定しています。ここではその中身を、使っているデータと計算式まで含めて説明します。
ステップ1: 国交省の内水ハザードマップと照合する
まず最初に、国土交通省が公開している内水(雨水出水)浸水想定区域のハザードタイル(disaportaldataの02_naisui_data)を確認します。地図タイルの画像をブラウザのcanvas上に読み込み、判定したい地点にあたるピクセルの色を直接読み取ることで、その地点が公式に浸水想定区域として指定されているかどうかを判定します。
指定がある場合は、これを最優先の警告として表示します。内水ハザードマップは自治体が下水道の排水シミュレーションをもとに作成する、地形統計より一段階信頼性の高い情報だからです。
ただし大きな制約があります。この全国データセットは約60市町村分しか整備されていません。全国の市区町村数(約1,700)からすると一部にとどまり、多くの地域では「指定なし」という結果が返ってきますが、これは「安全」を意味するのではなく、単に「その自治体のデータがこのデータセットに含まれていない」ことを意味します。お住まいの自治体が独自にPDF等でハザードマップを公開している場合もあるため、判定結果画面の「わがまちハザードマップを探す」リンクから確認することをおすすめします。
ステップ2: 地形の相対的な低さを統計的に判定する
内水ハザードマップの指定がない、またはそもそも整備されていない地点では、国土地理院が公開する標高タイル(基盤地図情報数値標高モデル。都市部を中心としたDEM5A・DEM5B、山間部を補うDEM10B・DEMGMを地理院が自動合成した統合タイル)を使い、独自に地形の凹凸を評価します。
手順は次のとおりです。
- 判定地点を中心とした半径500mの範囲を、50m間隔の格子状にサンプリングする(格子点は概ね200点前後)。
- 各格子点の標高を、地理院の標高タイル(
https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/dem/以下のtxt形式タイル)からブラウザが直接取得する。 - 中心地点の標高が、サンプリングした全格子点の中で下位40パーセンタイル以内かどうかを調べる。
- 同時に、中心地点の標高が周辺の平均標高より1.5m以上低いかどうかも調べる。
- 両方の条件を満たした場合のみ、「⚠️周辺より低い地形です」と警告する。
いずれの条件も満たさない場合は、「特記事項なし」という中立的な表示にとどめます。これは重要な設計判断で、「安全です」という断定は一切行いません。この判定は地形の高低差だけを見た単純な推定であり、下水道の排水能力や過去の浸水実績、河川の増水(外水氾濫)といった要素を一切考慮していないためです。
なぜこの数値(半径500m・下位40%・1.5m)なのか
当初は半径300m・下位15パーセンタイルという値で始めましたが、2026年8月に千葉県で発生した豪雨(内水氾濫により、公式の浸水想定区域外でも多くの住宅被害が出た)の実際の浸水地点と、浸水しなかった対照地点を使って検証したところ、うまく判定できないケースがありました。特に、幅300〜400m程度の緩やかな谷底地形では、半径が狭すぎると周囲との対比がはっきり出ないことが分かりました。
その後、複数回の再検証(浸水した地点・氾濫平野のように誤って警戒扱いになりやすい地点を合わせて7地点)を経て、現在の「半径500m・下位40パーセンタイル・標高差1.5m以上」という組み合わせに落ち着きました。この設定であれば、検証した7地点すべてを想定どおりに分類できています。
とはいえ検証した地点数はごく少数です。これは確定的な基準ではなく、今後さらに検証地点を増やしながら見直していく暫定値だとご理解ください。特に「浸水域の縁」のように、周辺との標高差が小さく難しい地点は、この単純な計算だけでは見逃す・逆に過剰検知することがあります。
補助機能: 標高段彩(色分け表示)
機械的な閾値だけでは判断しきれない地点のために、地図上に標高を色分けして重ねて表示する「標高段彩」トグルを用意しています。判定に使っているのと同じ標高タイルのデータを、0〜50mの範囲で段階的に色分けしてcanvas上に自前で描画しており、既知の浸水エリアと色(=高さ)を見比べることで、閾値では拾いきれない微妙な地形をユーザー自身の目で判断する助けになります。国土地理院の標準の「色別標高図」は全国共通のスケール(富士山クラスまで想定)のため低地では色の差がほとんど出ず、この用途には不向きだったため、低地向けに独自の配色で描画しています。なお元データの制約により、ズーム14相当までの解像度です。
まとめ
ミズタマリスクの判定は、公式の内水ハザードマップ(整備されている地域のみ)を最優先しつつ、それがない地域については地形の相対的な低さという単純な統計量で補完する、という設計です。あくまで参考情報であり、公式の避難判断はお住まいの自治体のハザードマップと気象庁の情報を必ず確認してください。