「内水氾濫」という言葉は、河川の氾濫(外水氾濫)に比べるとあまり知られていません。しかし2026年8月の千葉県豪雨のように、公式のハザードマップの想定区域外でも被害が出る主要な原因になっています。ここではその仕組みと、ハザードマップがどこまでカバーしているかを整理します。
内水氾濫と外水氾濫の違い
外水氾濫は、河川そのものが増水し、堤防を越えたり決壊したりして水があふれる現象です。ニュースで大きく報道される「川の氾濫」のほとんどはこちらです。
一方内水氾濫は、川があふれるのではなく、市街地に降った雨が下水道・排水路・水路の処理能力を超えてしまい、雨水そのものが行き場を失ってあふれる現象です。堤防の外側、つまり普段は「川から守られている」はずの市街地の内側で発生するため「内水」と呼ばれます。特に、周囲より低い窪地や谷状の地形、かつて水田や湿地だった土地を宅地化したエリアでは、雨水が自然に集まってきやすく、内水氾濫のリスクが高くなります。
2026年8月の千葉県豪雨で起きたこと
2026年8月、千葉県では局所的な豪雨により内水氾濫が発生し、住宅被害が想定を大きく超えました。ウェザーニューズの分析によると、被災者の約2人に1人が公式の浸水想定区域の外にいたとされています。
被害が集中したエリアの多くは、台地が侵食されてできた枝分かれ状の谷地形(周囲より数m〜十数m低い)で、かつては水田だった土地が宅地化によって保水機能を失っていたことが要因として指摘されています。つまり「ハザードマップに載っていないから安全」ではなく、「その場所の地形がそもそも水を集めやすい形をしている」かどうかが、想定外の浸水を左右していたということです。ミズタマリスクは、この「地形そのものが持つリスク」を、ハザードマップの空白地帯でも簡易的に確認できるようにという発想から作られています(具体的な判定方法は判定ロジックの詳しい仕組みで解説しています)。
内水ハザードマップの整備状況
内水氾濫のリスクを示す「内水(雨水出水)ハザードマップ」は、自治体が下水道の排水能力をもとにシミュレーションして作成します。河川の氾濫を示す洪水ハザードマップに比べて、必要なデータや解析の手間が大きいため、整備がかなり遅れているのが実情です。
国が公開している全国データセットでは、整備済みの自治体は全国でおよそ60市町村程度にとどまります。全国の市区町村数(約1,700)と比べると、まだごく一部です。お住まいの地域がこのデータセットに含まれていなくても、自治体が独自にPDF等でハザードマップを公開している場合があるため、「わがまちハザードマップ」のような一覧サイトから個別に確認することをおすすめします。
窪地・谷状地形とリスクの関係
内水氾濫は「その場所に雨水がどれだけ集まりやすいか」という地形の性質と強く関係します。周囲より低い窪地や、谷が入り組んだ地形では、周辺に降った雨水が地表を流れて集中しやすく、排水が追いつかなくなったときに深く・長く水が滞留する傾向があります。
ミズタマリスクは、この「周囲より低いかどうか」という一点を、国土地理院の標高データから機械的に判定しています。ハザードマップが未整備の地域でも、地形の傾向だけは無料で参照できる公開データから推定できる、という考え方です。ただし下水道の排水能力そのものや、実際の降雨パターンまでは考慮していない単純な推定にとどまる点にはご注意ください。
大雨のときにできること
内水氾濫は局所的かつ急激に進行することがあります。事前の備えと、大雨時にとるべき行動については大雨のときに取るべき行動のページにまとめています。